食肉用語の解説ハム

もともとは豚などのもも肉を指す言葉ですが、保存用に塩漬けして燻製等をした豚のもも肉を指します。保存目的であるため、海外の伝統的なハムは非加熱のものが多く、気候風土に適した保蔵法を組み合わせて独自に発展してきました。ハムは有史以前から存在しており、起源は定かではありません。昔は骨付のままで製造したものが多く、加工中に除骨したものは、骨(bone)がない(-less)「ボンレスハム」といいます。

一方、我が国ではもも肉に関わらず、単一の肉塊を塩漬けして加工したものを指し、加熱したハムが主流です。我が国のハム類は、消費者庁が所管する品質表示基準において定義されていまして、背肉(ロース)で作った「ロースハム」や肩肉で作った「ショルダーハム」、バラ肉で作った「ベリーハム」などがあり、部位別の独自の分類があります。我が国におけるハム類では、その生産量の70-80%をロースハムが占めることから、ハムと言えば円形のロースハムをイメージするでしょう。しかし、ロースハムは日本が発祥ですので、欧米では日本のようなハムをほとんど見かけることがありません。また、小片の畜肉をつなぎ合わせて固めて作ったものは「プレスハム」と呼ばれ、日本独自のものであり、ハム類とは区別されます。

我が国の生ハムは、「ラックスハム」と分類されていますが、ロースハムが主流の我が国では、生ハムもロースで作られるようになり、ドイツにおいてロースで作られる生ハムの「ラックスシンケン(Lachsschinken)」に由来します。「ラックス(Lachse)」とはドイツ語で「鮭」を意味し、見た目が似ているためです。

現代の工業製品として作られるハム類の多くは、伝統的なハムと比べて食塩含量が低くなってます。これは冷蔵技術等の発展により食塩の保蔵効果に依存しなくてもよくなったことや、健康を意識した減塩志向によるところが大きく影響しています。しかし、食塩は食肉タンパク質を溶け出させ、食肉製品の品質に重要な「保水性」や「結着性」の発現に不可欠であります。このため、食塩を減らしすぎると食肉が有するこれらの機能を発現できなくなり、食肉以外の副原料や食品添加物などを加えて補われています。

(北海道大学 若松純一)