食肉用語の解説ジビエ

この言葉は日本人にはあまり馴染みがありませんが、狩猟による鳥獣肉をジビエ gibier【仏】といいます。ジビエはハンターが狩猟によって、食材として捕獲した野生の鳥獣(ソバージュ sauvage【仏】)を意味します。しかし、その供給は必ずしも安定せず、また入手困難な場合には高価になってしまいます。このような理由で、飼育してから一定期間野放したり、生け捕り捕獲して餌付けしたものをデミ・ソバージュ(demi sauvage【仏】:半野生)と呼び、これらもジビエとして流通しています。また英語ではゲームミートと言い、古来より狩猟民族であった私たちの祖先はジビエなしには語れないと言っても過言ではありません。

ジビエの狩猟では、銃弾によって可食部分が大きく損傷、また内臓が飛び散って味が悪くなってはいけません。さらに、獲物を仕止めた後も、血抜きや解体といった処理を適切かつ迅速に行う必要があります。これらはプロのハンターに求められる仕事です。野生の鳥獣は一般的には、冬に備えて身体に栄養を蓄えるので、秋がジビエの旬となります。冬になるとジビエの餌となる果実などが減少するので、年末にかけて一般に肉質は低下すると言われています。ジビエは狩猟によって食料を得てきたヨーロッパの人々にとっては身近であり、不可欠な食材なのです。ジビエの種類は4本肢の獣類と、2本肢の鳥類とには大別されます。つまり、シカ、イノシシ、マガモ、キジ、ヤマウズラ、山シギなどがあります。さらに変わったところでは、トナカイ、タヌキ、カンガルー、クマ、ハトなどがあります。

日本国内ではこれらのジビエに対しての厳格な法的な規制は未整備でしたが、厚生労働省は2014年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を公表しました。現行、シカやイノシシを食肉として解体・処理するために、食品衛生法第52条第1項の規定による営業許可のうち、食肉処理業の許可を受けた施設で行われていますが、これは全国で約400箇所あります。また、各地方公共団体でもジビエ対応が求められ、それぞれでガイドラインやマニュアルが策定されるようになってきました。これによると、食用に供する目的で、と畜場法に規定する獣畜以外の獣畜、若しくは食鳥(鶏、あひる、七面鳥)以外の鳥をと殺し、もしくは解体するには「食肉処理業」の営業許可が必要となります。許可を得ていない場所で解体処理されたシカやイノシシは販売してはならず、ジビエの普及にあたり衛生面での向上が今求められています。

(麻布大学 押田敏雄・坂田亮一)