食肉用語の解説食肉の非破壊分析
「非破壊分析」とは、分析対象物を文字通り壊すことなく、その成分などの特性を分析することを指します。食肉において実用化されている非破壊分析には、電磁誘導を利用した金属片の混入検出や、X線を用いた骨の検出、近赤外分光を用いた成分分析、超音波画像や写真を用いた枝肉や部分肉の歩留予測などがあります。
非破壊分析の利点として以下が挙げられます。
- 非破壊ゆえに試料を消費しないので全数検査が可能
- 試料調製が必要なく迅速
- 慣行の化学分析のように試薬や溶媒を必要としないので人体や環境への負荷が少ない
- 試料の数が増えても検査コストはあまり増えないため費用効率が高い
- 非接触で計測可能な場合は衛生面でも優れる
- 抽出したり取り出したりすると変質してしまう測定対象物質でも、試料調製しないのでin situ(その場所にあるまま、ありのまま)の状態で調べることができる
特に効率面の利点は大きく、工場での工程管理などに適しています。
一方、非破壊分析法は、検出感度や精度で破壊法に劣ることが多く、厳密な結果が必要な場合は破壊的な方法を用いるなど、目的に応じて使い分ける必要があります。AOAC International公定法(第20版)の食肉・食肉加工品のセクションには成分分析のための40の方法が収録されていますが、非破壊的な分析が可能な近赤外分光や核磁気共鳴を応用した2つの成分分析法が含まれています。これらの方法は試料調製が必要なことから厳密には非破壊分析とは呼べませんが、迅速に結果が得られることから原料受け入れなど生産ラインでの利用も期待できます。
非破壊分析には様々なセンサーが使われることがあり、AIの応用によってスマートセンシングなどと呼ばれるものへ様々に研究が展開しており、高度な判断が可能な省力化技術としても将来実用化することが期待されます。
(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 本山三知代)