食肉用語の解説食肉の格付
食肉の格付とは、公益社団法人日本食肉格付協会が農林水産省の承認を得て定めた全国統一の取引規格に基づき、1頭毎に食肉の品質評価を行うことです。市場に出回る枝肉の約8割(年間に牛肉であればおよそ90万頭、豚肉は1200万頭)が格付されます。この格付に基づき全国各地の食肉卸売市場や食肉センター等で公正な取引が行われ、適正な価格の設定や生産・流通の合理化に貢献しています。また、格付の結果は育種改良や飼育管理の改善に役立てることができます。
牛肉は牛枝肉取引規格(表1, 2)に従い、枝肉の第6-7肋骨間切開面でロース芯面積、皮下脂肪およびバラの厚さなどを計測し、A~Cの3段階の評価(歩留等級)、および脂肪交雑度(Beef Marbling Standard; BMS)、しまり・きめ、肉色などを1~5段階で評価し(肉質等級)、その組み合わせからA5~C1の15段階に格付されます。
「A5ランクの牛肉は高級で美味しい」と思われがちですが、あくまで歩留等級(A~C)は枝肉からどれだけ赤身肉が採れるか、肉質等級(1~5)は脂肪交雑が多いかなどを示す指標であり、等級が高いほど美味しいと評価されるわけではない点には留意していただきたいです。
牛枝肉取引規格の詳細は日本食肉格付協会のHPをご参照ください(http://www.jmga.or.jp/standard/beef/)。
豚肉は豚枝肉取引規格に従い、半丸枝肉(背骨に沿って縦に切断された状態)を用いて、外観、重量、皮下脂肪厚などから5段階(極上、上、中、並、等外)に格付されます。牛とは異なり、枝肉の切開は行わずに格付を行います。
豚枝肉取引規格の詳細は日本食肉格付協会のHPをご参照ください(http://www.jmga.or.jp/standard/pork/)。
また、枝肉・食肉の格付は日本のみならず、アメリカ、オーストラリアやヨーロッパなどの諸外国でも行われています。一部の国では格付が競技化されており、特に高校生や大学生による競技会が盛んに行われています。日本でも、全日本大学対抗ミートジャッジング競技会が2009年より開催されており、食肉格付に関する体験的な学習を通じて、畜産業や食肉産業の役割や魅力に対する学生の理解増進を図っています。競技では、実際の枝肉を用いて歩留等級や肉質等級の判定項目をもとに枝肉の順位付けを行い、その正確さを競います(精肉や部分肉も)。さらに成績優秀者はオーストラリアで行われる世界大会に出場し、海外学生との交流や海外の食肉市場を体験できます。また、競技の他にも産業界との交流の機会を提供し、学生同士で討論したりして、食肉について深く学ぶことができます。
皆さんもこれを機に食肉の格付を学んでみてはいかがでしょうか。焼肉屋さんでの話題やスーパーでのお肉の目利きに役立つかもしれませんよ。
(北里大学 小宮佑介)