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研究風景ワーナーブラッツラーせん断力の測定

お肉の「おいしさ」にとって、歯でかみ切るときに感じる「やわらかさ」は重要な特徴です。この記事では、お肉のやわらかさを客観的に表現する指標となる「ワーナーブラッツラーせん断力」の測定方法について説明します。

まず、測定するお肉は全て同じ形に整えます(図1A)。また、温度管理のできるホットプレートや恒温水槽等を用いて、加熱温度条件を統一します。さらに、お肉の中心に温度センサーを差し込んで、中心の温度を測定し(図1B)、事前に設定した温度になるまでお肉を加熱します(実験の目的にもよりますが、一般的には70℃前後)。加熱を終えたお肉を冷却した後、筋肉の線維の方向に沿って直径0.5インチの太さに抜き出します(図1C)。お肉のやわらかさは、火の通り具合や測定するお肉の太さで変わってしまいます。このため、ここまで説明してきたように、加熱するお肉の形、お肉を加熱する条件、中心部の加熱到達温度や測定するお肉の太さまで、厳密に統一する必要があります。

図1. ワーナーブラッツラーせん断力価の測定サンプルの調製

 

抜き出したお肉を測定装置の台座に載せ、V字型のブレードで切りながら、どれだけの力がかかっているかを測定します(動画1)。American Meat Science Associationのガイドライン(1995)では、お肉を切るときのブレードの移動速度は、200から250 mm/分と定められています。測定中に一番大きな力がかかった時の値が、お肉のやわらかさの指標となる「ワーナーブラッツラーせん断力」です(動画1)。

 

動画1.ワーナーブラッツラーせん断力の測定の様子

 

「ワーナーブラッツラーせん断力」は、様々なお肉のやわらかさの測定方法の中でも、人の感じるやわらかさに近いとされており、お肉の品質を調べている世界中の研究室で測定されています。同じ方法で測定することで、お肉の「やわらかさ」を、科学的に比較することができるのです。

(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 渡邊源哉)