【大会報告】第59回日本食肉研究会大会
平成30年3月30日に東京大学農学部において、第59回日本食肉研究会大会が開催された。
根岸晴夫会長の挨拶により開会され、午前中はAbdulatef Ahhmed氏(Yildiz Technical University、トルコ)およびSeon-Tea Joo氏(Gyeongsang National University、韓国)のを海外から招き、両氏による特別講演が催された。Ahhmed氏には「Accreditation of Halal meat products and the diversity of their protein properties」という演題で、ご講演いただいた。ハラルについての概要から具体的なと畜方法など、丁寧に説明いただいた。また、これまで取り組んでこられたハラルミートおよび加工品の生理活性についても紹介いただいた。講演の最後には、2020年の東京五輪に向けて、日本もより熱心にハラルに取り組むべきというメッセージをいただいた。Joo氏には「Health implication of consuming highly marbled Hanwoo beef」という演題でご講演いただいた。Hanwooとは韓牛とも呼ばれる韓国在来牛のことで、日本の和牛のように赤身にサシ(脂肪交雑)が多く入る特徴を持つ。そのHanwoo肉の栄養機能について紹介があった。特に他の牛肉に比べ脂肪中のオレイン酸含量が高く、脂肪そのものが高い栄養機能を持つことが説明された。
午後には、第68回国際食肉科学技術会議(ICoMST2022)組織委員会発足式が行われ、坂田亮一副会長より概要の説明があった。その後、一般研究発表として以下の8演題の発表(敬称略)があり、各発表に対して闊達な議論がなされた。
1)食肉の加熱調理によるメイラード反応生成香気(DMHF)の保健的作用(横山壱成ら、北里大学獣医学部など)
2)ジビエの利活用:消化酵素処理による生理活性の向上(金子桜子ら、麻布大学大学院)
3)低温で増殖可能な乳酸菌の探索と食肉の低温乳酸発酵への応用(村橋誉将ら、名城大学大学院)
4)レトルト加熱牛肉香に対する畜種の影響(榎本光洋ら、日本獣医生命科学大学)
5)味覚センサ分析および官能評価による牛肉呈味性への筋内脂肪の影響(趙婭楠ら、神戸大学大学院など)
6)Temporal Dominance of Sensations (TDS)法による食肉の評価-食肉の官能特性に寄与する主要な感覚要素の探索-(渡邊源哉ら、(国研)農研機構畜産研究部門)
7)牛肉の焙焼に伴う香気物質の動態(小林正人ら、(一社)家畜改良事業団)
8)食肉製品製造における乾燥技術の研究(加藤慶一ら、プリマハム株式会社)
また、第2回伊藤記念財団賞受賞講演として、宮口右二会員(茨城大学)に「筋漿タンパク質による筋原線維加熱ゲル化促進作用に関する研究」という題目で、これまで宮口会員が精力的に取り組んでこられた研究についてご講演いただいた。食肉製品のテクスチャーについては、筋原線維に含まれるミオシンやアクチンの寄与が大きく、それらタンパク質に注目し多くの研究がなされてきたが、宮口氏はこれまで影響はほとんど無視できるとされていた筋漿タンパク質に着目し、筋漿タンパク質存在下でソーセージエマルジョンのゲル強度が増大することを明らかにした。また、筋漿タンパク質中のゲル強度増大作用をもつ成分の特定から、その作用機序について解説いただいた。
最後に、西邑隆徳副会長(北海道大学)により閉会の挨拶と同時に、今大会創設された優秀発表賞の表彰があり、「食肉の加熱調理によるメイラード反応生成香気(DMHF)の保健的作用」の発表をした横山壱成さん(北里大学)に贈られた。
大会後は、東京大学生協第二食堂において研究交流会が開かれ、親睦を深めた。なお、大会には130名(うち学生14名)、研究交流会には73名(うち学生9名)の参加がそれぞれあり、盛況のうちに終了した。