食肉用語の解説和牛
和牛とは,食肉専用に用いられているウシのうち,「黒毛和種」「褐毛和種」「日本短角種」「無角和種」およびこれらどうしを交雑させたものを指します。食肉を販売する際に,これら以外の牛肉に「和牛」の肉であると表示することは,「食肉の表示に関する公正競争規約」において禁止されています。また,農林水産省が2007年(平成19年)に公表した「和牛等特色のある食肉の表示に関するガイドライン」によれば,「和牛」と表示できる牛肉の条件として,上記の品種であることが家畜改良増殖法と呼ばれる法律に基づく登録制度等によって証明でき,かつ「国内で出生し,国内で飼養された牛であること」が牛トレーサビリティ制度により確認できることが示されています。つまり,上記の品種であり,かつ国内で出生し飼養されたことがそれぞれ証明・確認できることが,牛肉を「和牛」として販売するために必要な条件ということになります。このことから考えると,「和牛」は「国産牛」の一部であるとも言えます(「国産牛」の項目を参照してください)。すなわち,全ての「和牛」は「国産牛」であるということになります。
実際には,和牛において,脂肪交雑(しもふり)が入りやすく肉質がすぐれていると考えられている「黒毛和種」がその多くを占めます。この「黒毛和種」は,日本在来のウシを基にして,明治以降,外国の肉専用のウシを交配して品種として造成されたものです。良く名前を聞く優良ブランドの多くはこの「黒毛和種」で,全国的に生産されています。「褐毛和種(あかげわしゅ)」は薄い褐色の体毛を持ち,主に熊本県や高知県で生産されています。「日本短角種」は,北日本の気候・風土に適合したウシで,岩手県や秋田県,青森県,北海道で主に生産されています。「無角和種」は名前の通り角が無いことが特徴ですが,生産頭数は極めて少なくなっています。
現在,海外においても,和牛の遺伝子を持つ「Wagyu(ワギュウ)」が生産されていることが報じられています。しかし,日本国内では,上記の「国内で出生し,国内で飼養された牛であること」という条件から,海外産の「Wagyu」を「和牛」として販売することはできないこととされています。逆に,わが国からすぐれた「和牛」を輸出するために,わが国で生産された「和牛肉」にだけつけられる「和牛統一マーク」が決定されており,今後の海外展開が待たれるところです。
(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 佐々木啓介)