食肉用語の解説食肉の熟成

動物をと畜(と殺)した直後の食肉は,軟らかく,保水性1)が高いですが,味や香りは乏しいものです。また,しばらく経つと死後硬直2)を起こして硬くなり,構造中に水が保たれる余地が減って保水性が低くなります。しかし,これを更に低温で貯蔵すると軟らかくなり,保水性も回復して,味や香りがよくなります。このような,死後硬直より後の貯蔵によって食肉がおいしくなることを熟成といいます。また,このような変化を起こすための貯蔵そのものを熟成と呼ぶことがあります。

熟成は,食肉の中にある様々な因子で引き起こされると考えられています。食肉が軟らかくなるのは,カルシウムイオンあるいはタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が筋肉の中の筋原線維3)の構造を弱くすることで引き起こされると考えられています。また,そのような構造の変化は,水を保つ余地を増やすことで保水性の回復も引き起こすと考えられています。味がよくなるのは,プロテアーゼが食肉タンパク質を分解して,うま味などの味を持ったペプチドやアミノ酸が増加することに原因があると考えられています。ペプチドやアミノ酸は,食肉を加熱した時に発生する香りの素でもあるので,それらが増加することは調理肉の香りがよくなることの原因の一つになっています。熟成に必要な日数は動物の種類によって異なっており,と畜後の4℃の貯蔵で,牛肉は10日,豚肉は3~5日,鶏肉は0.5~1日とされています。

ハムソーセージのような食肉製品をつくる塩漬4)において,ピンク色の発色を十分にさせ,特有の風味を形成するための期間も熟成と呼ばれます。

1)保水性:肉が水を保つ性質で,これが高いほど肉を噛んだときにジューシーに感じます。
2)死後硬直:動物が死んだあと一定の時間がたって収縮を起こし硬くなること。
3)筋原線維:筋肉の細胞の中にあって収縮を引き起こす構造で,アクチン,ミオシンなどの様々なタンパク質が組み合わさってできています。
4)塩漬(えんせき):食肉製品を製造するために,原料肉を食塩,発色剤,砂糖,香辛料などとともに一定期間漬け込むこと。

(日本獣医生命科学大学  松石昌典)